大判例

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大阪地方裁判所 昭和30年(レ)51号 判決

「控訴人と被控訴人間の大阪簡易裁判所昭和二九年(イ)第四三三号家屋明渡請求事件について、昭和二九年三月九日右当事者間に裁判上の和解が成立した。右和解では(一)被控訴人は控訴人に対して富田林市毛人谷二八三番地上木造瓦葺二階建劇場一棟を昭和二九年二月一日から同三一年一月三一日まで賃料一ケ月四万円毎月末日持参支払の約で賃貸すること、(二)控訴人は被控訴人に対し昭和二九年三月一五日右家屋の敷金として二〇万円を支払うこと、(三)控訴人は被控訴人に対し昭和二八年九月一日から同二九年一月末日までの右家屋について生じた損害金一〇万円の支払義務を認めこれを同二九年三月末日より毎月末日に一万円づつ持参支払うこと、(四)控訴人において(一)の賃料又は(三)の分割金の支払を引続き二回以上延滞するか(二)の敷金の支払をしないときは、被控訴人は催告を要せず(一)の家屋の賃貸借を解除することができること等を約したが、被控訴人は控訴人が昭和二九年六月一日以降(一)の賃料及び(三)の分割金の支払を遅滞し、(二)の敷金の支払を怠つたことを理由として、前記家屋の賃貸借を解除したと称し昭和二九年八月一三日前記和解調書につき執行文の付与を受けその明渡の強制執行に着手した。(中略)

次に控訴人は、被控訴人において昭和二九年六月分の和解条項(一)の賃料及び(三)の分割金の支払を遅滞していないから本件家の賃貸借の解除は効力がないし仮に、同年六月分及び七月分の右(一)の賃料及び(三)の分割金の支払を遅滞しているとしても、被控訴人の本件家屋の賃貸借の解除は信義則に反し、且つ権利の乱用であるから、本件執行文の付与は違法である旨主張するので考えるに(中略)元来金銭債務を負担する者は特別の意思表示又は慣習のない以上、現金を提供しなければ債務の本旨に従つたものということができないものであつて、支払の為小切手が授受された場合であつても小切手の支払があつたときに始めて弁済の効果が生ずるものといわなければならない。ところが被控訴人は昭和二九年七月三〇日前示六月分の賃料及び分割金を小切手で受取る際既に同年六月末日の弁済期を遅延していることであるから、右小切手が不渡となるようなことがあれば弁済の効果を認めないことを控訴人に予告していたものであつて前示小切手が不渡となることが明かになつた以上、控訴人がその後八月二日及び同月五日頃現金で被控訴人に弁済の提供をしたとしても、七月末日に弁済の提供があつたものとしての効果を生ずるわけがない。すると控訴人は同年七月末日現在において六月分と七月分の賃料及び分割金の支払を遅滞した効果を生ずるものというの外なく、控訴人が(二)項の敷金を完済したかどうかに関係なく、被控訴人の本件家屋賃貸借の解除は有効であるのみならず、前記認定の事実関係に徴すると、被控訴人が控訴人の八月二日及び同月五日弁済期を経過したものとして受領しなかつたとしても、信義に反し権利の乱用にあたるものといいえないし、控訴人がその主張のように本件家屋につき必要費有益費を支出していたとしてもこの事実だけでは、控訴人の前示解除が信義に反し権利の乱用となるものでないこと多言を要しない。」

(二)「原判決の基本となつた昭和三〇年四月一三日の原審最終の口頭弁論調書には裁判官野田四郎の署名下にその押印を欠いていることが認められる。民訴法一四七条によると口頭弁論の方式の適否は調書によつてのみ証明することができるところ、前示のように調書に裁判官の押印を欠くときは、右調書は証明の効力を有しない結果右裁判官によつてなされた原判決が右口頭弁論に基いてなされたことを証明できないし、従つてその判決は違法なものとなるものといわねばならない。そうだとすると原判決はこの点から全部取消すべきものであるが、事件を第一審に差戻すことなく、自ら本案について裁判する。」

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